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追い求めるべきもの ~コーチの「あり方」を求めて~
東京ユナイテッドFC 監督 福田 雅
競技におけるコーチは、言うまでもなく、チームを率いて勝利に導く人ですが、勝利を追求するプロセスに学びがあることは事実であるものの、勝利という結果があって初めて、そこに至るまでのプロセスが肯定されるというのも否めない事実です。つまり、コーチの評価は、極めて客観的事実に左右されやすく、しかしながら、結果のみを求めるのがコーチの「あり方」とは思いません。このたびは、自分なりにコーチとしての「あり方」を考えてみました。
自身の競技人生においてコーチが守ってくれた未来 ~揺るぎない誇りと自信~
ここで、まずは私の競技人生を簡単に紹介させていただきたいと思います。生まれる際に大けがを負い、左手が麻痺した状態にある私には、サッカーしかありませんでした。ただ、当時はサッカーのコーチも少なく、友人の父親を監督に据えるものの、見よう見まねでサッカーを始めた記憶があります。
ここまでの人生において、何度も目標を失いかけ、道を踏み外しかけたこともありましたが、そんな自分を救ってくれたのはサッカーであり、何より、サッカーを通じて真剣に関わってくれた方々でした。彼らは、立場は違えど、皆さんが私にとってのかけがえのないコーチです。
サッカーという競技レベルの上達はさておき、ここまでの人生において、サッカーを通じての自身の成長と成熟を実感しています。サッカーをしていなかった自分の人生がどうなっていたのかはわかりませんが、今の人生に誇りと自信があることは間違いありません。
改めて、私の人生を形づくってくれたのは、サッカーを通じて真摯に私と向き合ってくれた方々(コーチたち)で、コーチという仕事は、目の前にいる選手たちの未来に関与するのだということを忘れてはならないと思います。
私自身も、目の前にいる選手たちの未来に関与している自覚と、一人一人の選手たちの背後には、ここに至るまで関わってくれた多くの方々の「想い」が詰まっていることを忘れぬようにと心がけてきました。

©TOKYO UNITED FC
知らぬ間に育まれた自身の個性 ~自身のあらゆる経験がコーチとしての個性となる~
私が監督を務める東京ユナイテッドFCというクラブの選手たちは、主に「プロになれなかった者」たちで編成されていますが、彼らを率いるにあたり、単に目の前の戦いに勝つだけではなく、勝利を追求する過程におけるエッセンスを、いかにして社会一般の出来事のそれに置き換えるかに腐心しています。
一方で、自身の人生における経験から得たエッセンスを、いかにして選手に伝えるかが、プロサッカー選手としての経験もない私の、コーチとしての個性だとも思っています。
技術を超えるもの ~「敬意」と「愛情」が育む説得力~
それを伝えるために必要な技術として、言語化能力、表現力、熱量等々ありますが、あらゆるものを駆使しつつ、それでも最後に問われるのは、目の前にいる選手への「敬意」と「愛情」だと思うのです。
伝達技術を欠いていても、「敬意」と「愛情」があれば、伝わるものはありますが、後者を欠いていると、どんなに伝達技術が高くても伝えたいことは伝わりません。
コーチは、時として選手と一線を引く必要もあると思っています。時には非情な決断を下すこともありますので、余計な情はむしろ判断を鈍らせます。その際に問われるのが、選手への「愛情」と、それに基づく信頼関係ではないでしょうか。
非常な決断を下す際の選手への説得力は、その決断が絶対的に正しいかどうかではなく、「誰が」くだしたかどうかなのです。私は、何度もその説得力を欠き、チームを導くことができなかったという苦い経験があります。
「客観的な正解を伝えること」が必ずしも説得力ではなく、「誰が伝えるか」によって説得力が生まれ、伝えられたことが正解になりえるという現実があります。
「なぜ伝わらない?」と思うことも多々ありますが、それも詰まるところ、「伝わらない」のは伝える側の責任だと思っています。
コーチであることの幸せ、選手たちへの感謝 ~エモーションをロジカルに語る~
ここまで書いてきて、改めて思うことは、コーチという仕事は、私が51年の人生で最も難しいと思う仕事であり、同時に、最も楽しいと感じる仕事でもあります。
「ロジック」をロジカルに伝えることはできて当然のことですが、「エモーション」をいかにロジカルに伝えるかという難題にも立ち向かい続けねばなりません。
それでも、選手たちとの関りを通じて、私自身が誰よりも成長させてもらっているという実感があり、私の期待に応えてくれる選手たちによって勝利がもたらされたときの喜びは、おそらく誰よりも大きいと思っています。これこそコーチ冥利に尽きるものであって、自分を信じてついてきてくれる選手たちに、心から感謝の気持ちを表したいと思うのです。
「名将」をつくるのは選手たち ~もがき苦しむ喜びを胸に~
勝ち続けて「名将」と呼ばれるコーチたちでさえも、その背後には、コーチを信じてハードワークを重ねてくれた選手たちがいるのであって、「名将は選手たちがつくりあげる」と言っても過言ではありません。
私は、コーチという仕事に魅せられて、今なお自分磨きに勤しむ日々ですが、そのもがき苦しむ喜びの尊さを、一人でも多くの方々に伝えたいという気持ちでいっぱいです。

©TOKYO UNITED FC
福田 雅(ふくだまさし)公認会計士、JFA理事 / 東京FA監事

1975 年 5 月 9 日生まれ。東京都出身。
暁星高校で全国高校サッカー選手権に出場。東京大学経済学部に進学しサッカー部主将を務める。卒業後は、公認会計士資格を取得し、投資銀行業務に従事するかたわら、母校の監督を務めコーチとしての人生を歩み始める(2006、2017~2019年:東京大学サッカー部監督、2007年~2010年:暁星高校サッカー部アシスタントコーチ)。2015年に東京ユナイテッドフットボールクラブを創設し、同時に監督に就任(完全なるアマチュア)。経営と現場の責任者を務め、Jリーグ昇格を目指し奮闘する日々を送っている。