日本学術会議若手アカデミーは2023年に
『2040年の科学・学術と社会を見据えて。いま取り組むべき10の課題』を発表しています。
日本コーチング学会は研究者と指導者の交流を通して体育・スポーツ科学の中核領域として発展し、社会に貢献してきました。
いま日本コーチング学会には次のステージに向けた学術的役割が求められています。
1 イノベーションの創出
日本学術会議若手アカデミーは2023年に『2040年の科学・学術と社会を見据えて
いま取り組むべき10の課題』のなかで、今後20年のイノベーション創出のために、基盤的・伝統的分野における知識や技術の蓄積を基盤とした
①越境研究の推進、②地域連携の推進、③国際連携の推進、④人材の育成、⑤研究環境・業界体質の改善
の5つの課題をあげています。それぞれの詳細は、『報告書』で確認をしていただきたいと思いますが、
ここでは日本コーチング学会における研究面において会員の皆様に考えていただきたいことを示しておきたいと思います。
2 研究と現場の架け橋
体育・スポーツ科学では、「老舗」のスポーツ生理学、スポーツ心理学、バイオメカニクス等の伝統的分野の研究成果を中心に蓄積されてきました。比較的新しい研究領域である「コーチング学」は、確かに多くの成果を残しつつありますが、一方で国内でさえもまだ研究領域としての十分な理解が広がっているとはいえないところがあります。
3 「総合知」を駆使
体育・スポーツ科学では、「老舗」のスポーツ生理学、スポーツ心理学、バイオメカニクス等の伝統的分野の研究成果を中心に蓄積されてきました。比較的新しい研究領域である「コーチング学」は、確かに多くの成果を残しつつありますが、一方で国内でさえもまだ研究領域としての十分な理解が広がっているとはいえないところがあります。今後は学際応用科学としてのコーチング学に対する理解とそれを可視化するための新たな研究スタイルの展開が求められると考えられます。
これからのコーチング学では、伝統的な研究領域に特化した研究者像よりも幅広い知識活動を遂行することができる、すなわち「総合知」を駆使した研究及び総合知を使いこなせる研究者が求められことになると思われます。
研究誌におけるオーサーシップに関する過度の競争は、研究・教育活動が狭い分野・領域に閉じこもることになり、領域を越境した研究の視点を持ちにくくなってしまうことが指摘されています。したがって、これからのコーチング学では基盤的・伝統的分野における知識や技術の蓄積を基盤としながらも、より総合的・統合的・文理融合的な研究
が求められることになるでしょう。このような科学のあり方の重要性については、すでに日本学術会議の『新しい学術の体系-社会のための学術と文理の融合-』のなかでもふれられていますので、会員の皆さまにもご一読願いたいと思います。今後20年を見据えて日本コーチング学会はこのような新たな研究・教育活動の受け皿としての役割を果たしていきます。
4 コーチング学の未来
コーチング学の研究成果はスポーツの実践はもちろんのこと、広く2040年の科学・技術と社会に貢献できることを目指す必要があります。 スポーツ実践に関わる多くの方々にご賛同いただき、日本コーチング学会の仲間になっていただくことをお願いする次第です。
2025年4月吉日
日本コーチング学会会長
青山 清英